〈生き方のstyle〉

生き方は、違っていい。違いこそ、豊かさ。自分に還れば、皆違う。自分を変えようと旅をした。旅は瞑想に導き、僕は僕に還ることにした。

南米ペルーの儀式「アヤ・ワスカ」体験


[TAMAKARA YOGA~魂と体をつなぐyoga~]のクラスを開いております、山崎大です。

世界一周の旅で一番強烈であった、南米ペルーでの儀式体験を前回に引き続き綴っていきます。

前回をまだご覧になっていない方は、古代の儀式「アヤ・ワスカ」を綴る←からご覧ください。




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アマゾン流域は、想像を裏切らず蒸し暑かった。


子どもたちが、物珍しそうに笑顔をのぞかせながら、こちらを見ていた。


村には、シャーマン呼ばれる人たちが数人暮らしていた。



何人かとお逢いし、その内の一人に儀式をとりおこなっていただくことにした。



断食をするように告げられ、儀式は夜、精霊たちが活動する時刻に行うという。



蒸し暑い中ではあったが、何も食べないことは特に苦ではなかった。



それよりも、村の人たちの笑う顔、薪で茶が沸いている台所、ジャングルの木々で作られた小屋やベッド、アルマジロを仕留め嬉しそうに帰って来る人々の生活に瞳は奪われて、氣がつけば太陽は沈んでいた。


時間にルーズという訳ではないのだが、南米を旅していて時間通りということは、そう多くなかった。


8時に儀式を始めると聞いていたが、おおざっぱなものだろうと目安程度に捉えていた。



時計など、きっと誰も持っていない村なのだ。



そうはいっても日本人の血なのだろうか、30分前には指定された儀式用の小屋に入り、スタンバイしていた。



緊張はしていなかった。



ここには、来るべくしてきている。
そんな、大船に乗った氣持ちで安心している僕が、儀式を目の前にする僕の背中を支えていた。




シャーマンが小屋に入り、儀式を始めると次げ、ろうそくに灯を灯した。




時刻は、ぴたりと8時を指していた。




慎重に、ミリ単位で調整するように、アヤ・ワスカと呼ばれる飲み物をコップにシャーマンが注ぎ始めた。


シャーマンは、そのコップを両手で包み腹の前に据えた。


祈りだろうか、伝わる歌だろうか、シャーマンの表情からは以前見せていた笑顔は消えていた。


真剣であるようで、どこか上の空であるような、不思議な顔をしていた。




これは、本当に儀式なのだ。




準備は、できたか?
僕の中の誰かが、心を決めよと告げていた。




アヤ・ワスカは、世界で一番まずい飲み物だと時々形容される。



口に含んだ瞬間、頬の内側に木々が持つ特有の苦みが広がった。

ほぼ同時に、塩と酸を含んだ強烈な刺激が、嗅覚を刺した。

どろどろと粘りがあり、色を見ずともそれは口の中で、紛れもなく褐色であることを伝えていた。

アヤ・ワスカはゆっくりと喉を通り越し、食道から胃が、どのように結ばれているのかを僕に克明に伝えながら、僕の内側を確かめるように進んでいった。



飲み干した後も、ずっと口の中に味が残った。




あぐらで座り背筋を伸ばし、瞳を閉じるように告げられた。




これは、瞑想の姿だ。

僕の中の誰かが、そのように分析していた。




シャーマンは「イカロ」と呼ばれる精霊から授かった歌を歌い、儀式に参加するものたちを導くと聞いていた。

イカロは、あくびのようであり、幼子の鳴き声のようであり、僕の歌という認識を大きく超えているものだった。

イカロに耳をあずけ、瞳を閉じていると、確かに心は穏やかになり、思考の数は自然と減っていった。






何分経過しただろう?







文献によれば、30分程でアヤ・ワスカの成分は効果を発揮するようだ。


ならば、恐らくはそのくらいの時間が経過したのだろう。






鈴虫の鳴き声が、聞こえていた。



カエルが池に飛び込んで、鳴いた。



同時にバッタが跳ねた。



どこに何匹の鈴虫が、どのような陣形を作り、音を奏でているのか、音を聞くだけで、見えた。






氣がつけば、鈴虫の音は、耳のすぐ隣から聴こえ、耳から脳の中に入り込み、僕の脳の中で鈴虫たちが鳴き声を上げた。




カエルもバッタもコウモリも、ジャングルの鳥たちも、すべて僕の内側から鳴いていた。




一つひとつの鳴き声の音は、波紋となって、重なり、混ざり、ひとつの絵を生み出していた。







彼らは、絵を、描いている。







氣がついた僕の驚きをよそに、その絵は次々にその様を変えていった。




色は驚く程鮮やかで、描写される風景は、ため息が出る程うつくしかった。




高い山の麓に、湖が広がり、山からは滝が流れていた。


彼らの描く絵は、映画のようだった。


次々と、映像は流れるように姿を変え、氣がつけば美しい地球を描いていた。




地球は、ぷるぷるのゼリーで出来ているように、小さく振動し、輝いていた。




突然地球に表情が浮かび上がり、おおきな笑顔がうまれ、瞳からは涙が溢れ出た。




体の中心から、心地よいしびれが全身に広がり、僕は僕自身も映像の地球と同じように、大きな笑顔を作り、泣いていることに氣がついていた。






「お前に、本当のことを見せてあげよう。」

突然、厳かな声が聞こえた。





「体の奥をみつめ、ひとつの細胞を見つめよ。そこには全てが記されている。お前は、全てを従えた、永遠の存在なのだ。」





眉間が急激に熱くなった。




激しい熱で、痛い。




やめてくれ!
僕の中の誰かが、そうさけんだ。



ここで避けたら、何をしにきたのだ。覚悟を持って、見定めよ。

もっと大きな別の誰かが、叫び逃げ出そうとする僕を諭していた。




眉間は、熱を持ち、赤く腫れ上がったように感じられた。




バリッっと音が聞こえた。




眉間が破れた。
そう感じた瞬間、背骨の一番下、仙骨がものすごい速度で振動を開始した。




同時に意識は、瞳を内側へ向かい、網膜を通り抜け、視神経を辿り、首筋から心臓へ向かった。



そのまま意識は、ものすごいスピードで、心臓の奥の細胞の一つへと焦点を定め、飛び込んでいった。









空間が、広がっていた。









膨大な記憶が、刻まれた空間だった。







生命体の記憶だ。






地球上に水が生まれ、小さな微生物がうごめいていた。


緑色の微生物だ。


次第に動きを伴い、アメーバのような動く微生物となった。



次第にそれは、魚のような生き物となり、陸を歩けるカエルのようになっていった。




爬虫類が、争いあっていた。



恐竜とは、本当にいたのだ。
意識の僕が、生命体の記憶を眺めながらつぶやいていた。




鳥となり、大空を羽ばたいている感覚や風景、羽を広げ羽に受ける大氣の圧力をリアルに感じ、肩甲骨が翼の名残であることを読み取っていた。



そうこうするうちに、生命体の記憶は、人間へとたどり着いていた。




白血球は、アメーバそのものであり、尾てい骨は尻尾の名残であり、手には水かきの面影が残る人間という生命体。
その奥には、あらゆる生命の膨大な記憶が刻まれていた。







そして、僕の意識は、青白い光となって空間に浮かんでいた。






心地よかった。





熱くも、寒くもない。





時間は、なかった。





なぜかと聞かれても、答えられない。



そこには、時間は存在しないということだけはよくわかった。








ずーっと下の方に、いままで使ってきた体が横たわっていた。





ああ、あの体だ。





愛しい、愛しい、あの体だ。

そう感じた。





いろいろな体験をくれた。




人と交わった。





様々な大地へと運び、肉を通した体験をくれた体だ。





感じたことのないほど、愛おしさを感じた。





ありがたい。





肉体を使った。体験の世界。





もう、肉体を離れ、心地の良い光の世界に行けることもよく分かっていた。





少しだけ、迷いがあった。






でも、まだこの体を使い体験させていただこう。

そう、決めた。






ずーっと下へと降りていった。



降りていくことは、思った以上に大変だった。




どす黒い、泥のようなものが、まとわりついてきた。




様々な恐怖や、悲しみや苦しみ、そういったものが降りるに連れて、伴にくっついてくるようだ。




「これが、この世界の体験なのだ」
諭すような声が聞こえた。




「光として、更なる光をもって、闇で包まれた上でも更に光ってみよ。」


「光は、震えることで、光を増す。光にとっての震えとは、感動だ。」


「感動せよ。感動させよ。闇は、苦しみとして悲しみとして、感動を生み出すために存在させた。」


「全ては大した問題ではない。感動に向かい、感動を生み出すために前進するのだ。」


厳かな諭す声が、肉体へと降りてゆく魂の僕に、力強く語りかけていた。









瞳を開けようとする。




開け方が、分からない。



上と下、右と左が分からない。



瞳は何とか開けたが、空間に浮かんでいる物体が、自分の手であると認識するまでには、相当の時間を要した。



指の動かし方を、思い出すように、確かめるように行う中で、このようにして幼い肉体に宿ってきたことを思い出していた。





そうか、こうして僕は、この星に生まれてきたのか。






アヤ・ワスカを通して、もう一度僕は、この世界に生まれた。



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